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大阪地方裁判所 昭和48年(わ)330号 判決

本籍

三重県阿山郡阿山町大字玉滝四二三二番地

住居

大阪府茨木市下穂積四丁目四番八号

室内装飾業

森岡武雄

昭和三年六月三日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき当裁判所は検察官大谷晴次出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役八月および罰金一、二〇〇万円に処する。

但し、この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、大阪府浪速区芦原町一、一七四番地に事務所をおき、室内装飾業を営んでいるものであるが、自己の所得税を免れようと企て、

第一  昭和四四年分の所得金額が二二、九七六、八三七円で、これに対する所得税額が一一、〇〇五、九〇〇円であるのにかかわらず、公表経理上架空の外注工賃を計上し、これによつて得た資金を架空名義預金にするなどの行為により、右所得金額中二一、〇二四、五五九円を秘匿したうえ、昭和四五年三月一三日同市浪速区所在浪速税務署において、同税務署長に対し、同年分の所得金額が一、九五二、二七八円で、これに対する所得税額が二七四、七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により所得税一〇、七三一、二〇〇円を免れ、

第二  昭和四五年分の所得金額が四〇、一二九、九八六円で、これに対する所得税額が二一、〇六七、四〇〇円であるのにかかわらず、前同様の行為により、右所得金額中三五、五八二、八三四円を秘匿したうえ、昭和四六年三月一五日前記浪速税務署において、同税務署長に対し同年分の所得金額が四、五四七、一五二円で、これに対する所得税額が九四七、七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により所得税二〇、一一九、七〇〇円を免れ、

第三  昭和四六年分の所得金額が四六、八五七、六一七円で、これに対する所得税額が二四、九〇五、五〇〇円であるのにかかわらず、前同様の行為により、右所得金額中三七、二七〇、九五〇円を秘匿したうえ、昭和四七年三月一五日前記浪速税務署において、同税務署長に対し、同年分の所得金額が九、五八六、六六七円で、これに対する所得税額が二、九〇一、五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により所得税二二、〇〇四、〇〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の検察官に対する供述調書

一、被告人の収税官吏に対する昭和四七年八月二二日付、同月二四日付、同年九月一一日付 同年一一月一三日付、同年一二月五日付、同月一六日付各質問てん末書

一、森岡正子の収税官吏に対する質問てん末書四通

一、国税査察官野村一夫作成の査察官調査書

一、収税官吏福島清作成の査察官調査書類(「銀行元帳」の表題の付されたもの)

一、被告人作成の昭和四七年一〇月五日付、同和一一月一〇日付、同年一二月一日付、同月一一日付(但し、「架空外注費による手持小切手、未払金、支払手形について」と題する分と、「各年末の預金残高について」と題する分の二通)、同月一三日付(但し、「不動産関係以外で各年分の必要経費とならない簿外支出「事業主貸となるもの」について」と題する分)、同月一四日付各確認書

一、森岡正子、株式会社日本クレジットビユーロー大阪支社業務課長谷口徳太郎各作成の確認書

判示第一、第二の各事実につき

一、被告人作成の昭和四七年一二月一一日付確認書(但し「会計処理の誤りによる未収入金、未払金について」と題する分)

判示第二、第三の各事実につき

一、被告人の収税官吏に対する昭和四七年一一月三〇日付、同年一二月二七日付各質問てん末書

一、川崎敬三、山口正勝の収税官吏に対する各質問てん末書

一、被告人作成の昭和四七年九月二六日付、同年一二月一三日付(但し、「居宅新築にかかる簿外支出について」と題する分)各確認書

一、小河博作成の確認書

判示第一の事実につき

一、被告人の収税官吏に対する昭和四七年一一月一〇付質問てん末書

一、被告人作成の同年一二月二五日付確認書

一、浪速税務署長作成の証明書(但し、昭和四四年分所得税確定申告書謄本に関する分)

判示第二の事実につき

一、被告人作成の昭和四八年一月一一日付確認書

一、国税査察官堀川明弘作成の調査書

一、浪速税務署長作成の証明書(但し、昭和四五年分所得税確定申告書謄本に関する分)

判示第三の事実につき

一、被告人作成の昭和四七年一二月一三日付確認書(但し、「東京寮新築にかかる簿外支出について」と題する分)

一、玉木淳の検察官に対する供述調書

一、同人の収税官吏に対する質問てん末書

一、川崎敬三、矢島金作、大沢惣七作成の供述書

一、浪速税務署長作成の証明書(但し、昭和四六年分所得税確定申告書謄本に関する分)

(法令の適用)

被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条一項、一二〇条一項に該当するので、情状によりいずれも懲役刑および罰金刑を併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罰なので同法四七条、一〇条により犯情の重い判示第三の罪の懲役刑に法定の加重をし、かつ同法四八条二項により罰金額を合算した刑期、金額の範囲内において被告人を懲役八月および罰金一、二〇〇万円に処し、諸般の情状に鑑み同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予し、同法一八条に則り右罰金を完納することができないときは金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとする。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 橋本達彦)

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